仕事と職場

《看護師》

  職業の概要
看護は女性の職業として最も古い歴史をもっています。看護のおもな役割は、①医師の行う治療の補助をする、②患者の看護を行う、の2つにわけられます。
とくに患者の看護という仕事は、看護師の専門職として重要な意味をもっています。医学の発達にともなう看護技術の向上、患者の社会復帰という広い意味でのリハビリテーションの過程において、看護師の果たす役割に対する認識がますます高まっており、現在の資格制度の是非についても根本的な検討がなされています。
また、これまで女性の職業と考えられていた看護ですが、最近では従来の精神障害者のための病棟に加えて、外科や内科、あるいは身体障害者の社会復帰を含めたリハビリテーション施設などで男子の看護師に対する需要が高まってきており、男性の新しい職業として定着・拡大されてきています。
日本看護協会は、男女共同参画社会実現に向けて看護職の「性別による相違をなくす名称の統一」のための法改正運動の結果、平成13年12月6日、衆議院本会議上で、可決。「保健婦助産婦看護婦法」の一部改正となりました。法改正後、看護職の名称は「保健師・助産師・看護師・准看護師」に改正されました。

  仕事の内容と職場
看護師は、主として病院内において医師の指示のもとに診療の補助と患者の看護を行います。
とくに後者においては、「患者の病気の状態を十分に理解・把握し、正しい観察と的確な判断によって、患者の生命を守り、体力の回復・増進につとめる」、そして、「少しでも早く社会や家庭に復帰出来るようにアシスト(支援)する」という重大な責任を負っています。
<病院の外来における仕事>
入院患者と違って外来患者に対しては、短いふれあいのなかで、その患者に必要な<助け>は何であるかを見抜く目を持っていなければなりません。そして、できるだけ苦痛や不安をやわらげるよう常に周囲に気を配っています。
服薬の方法や生活の仕方など、その患者の条件に応じて適切に助言します。また交通事故や労働災害など、救急を要する患者が運ばれてきた場合等どんな事態が起こっても、冷静・沈着に行動することが望まれます。

<病棟における仕事>
病棟看護は、24時間を通して患者の全生活にかかわり合う仕事です。勤務のタイムテーブルは病院により様々です。

病棟看護タイムテーブル(例)
日 勤   (AM8:30 ~ PM5:00)
準夜勤  (PM4:30 ~ AM0:30)
深夜勤  (AM0:00 ~ AM9:00)

勤務帯で申し送りを行い、交替制による看護体制をとります。上のスケジュールは3交替勤務として一般的なものです。勤務によっては夜勤が続いたり不定期な勤務で体力の消耗も大きくなります。普段から自分自身の健康管理への心がけが重要です。そして通常の看護以外に医療上の検査や処置、入退院の世話、突然容態が悪くなる患者への対応等、多忙な毎日を過ごします。
<手術室における仕事>
医師の手術にあたって手術機器の消毒をし手術室の環境に気を配ります。大手術は10時間以上に及ぶことも少なくありませんし、その間は気を抜くことがありません。従って、精神的、肉体的な消耗は大変大きなものになります。その中でスムーズに手術が進行するように器具を揃えて受渡しを行い、患者の病状変化に対応する看護師の役割は重要であるわけです。

<看護師の職場>
病院、医院・療養所、診療所、学校(保健室)、保健所、医務室(各種事業所)、福祉施設(障害者施設、乳児院など)、有料老人ホーム、訪問看護ステーションと、多岐にわたります。


《歯科衛生士》

  職業の概要
歯科衛生士は、歯科における専門的看護職といってさしつかえはありません。国民の歯科医療に対する需要は、保健衛生思想の向上、歯科医学の進歩発達、医療保障の充実などを背景に増加の一途をたどっているために依然高いものがあります。

  仕事の内容と職場
歯科衛生士は、歯科医師の指導のもとに限られた範囲の歯牙や口腔疾患の予防処置など、歯科診療の補助を行うもので、昭和23年に資格制度が確立されました。また高齢化社会の到来により、従来の歯科病医院や診療所での治療に加えて、在宅歯科保健医療サービスや地域歯科保健医療サービスの増加等、歯科衛生士への医療ニーズの多様化が進んでいます。

<保健指導>
虫歯や歯周病を予防するための歯の磨き方や虫歯になりにくいお菓子の選び方、妊産婦に対する栄養・食事及び歯科衛生の指導や相談を行います。また、小学校や養護学校、ろう学校等での歯磨き指導なども行っています。
〈予防処置〉
歯に付着している汚れ(歯垢・歯石)を除去して歯周病の予防や、歯に薬を塗って虫歯を予防します。
<診療補助>
歯科医師が行う診療行為の補助や、器具・材料・薬剤などの準備や管理、受付事務やカルテの整理などを行います。
<歯科衛生士の業務の広がりと将来性>
介護保険制度の制定により高齢者への介護巡回指導の需要拡大など、ますます業務の広がりを見せています。

《歯科技工士》

  職業の概要
歯科技工士は歯科医師の指示に基づいて、合成樹脂やセラミック、その他の新素材を用い、義歯・つぎ歯・充てん物(むし歯等につめるもの)、歯列矯正装置の作成、修理・加工を行います。これらの仕事は本来医師のものでしたが、歯科医療の進歩発展とともに分業専門化し、現在では歯科技工士が専門的に行っています。精緻なものを作り上げる手先のきめ細やかな技術と、それを裏付ける専門知識が求められます。最近では、歯を美しく見せるための美容歯科など新しい領域も出現しています。

  仕事の内容と職場
大きく仕事の種類を分けると「歯冠修復系」と「有床義歯系」に分かれています。
<歯冠修復系>
虫歯などで痛んだ部分に詰めるものを作ったり、歯を上から被すもの(歯冠)を正確に製作します。歯一本一本の機能を復元させるものとして緻密で重要な技術です。主なものとしてインレー、クラウン、ブリッジ、インプラントがあります。
<有床義歯系>
お年寄りの入れ歯や差し歯をを作るといえばわかりやすいでしょう。欠損した所に粘膜を介して歯を復元させるものとして、全部床義歯/部分床義歯/金属床義歯/矯正装置があります。
<歯科技工士の職場>
歯科技工士の職場は、歯科病医院および民間の歯科技工所などですが、現在のところ歯科病医院に勤務する人が多いようです。体の一部ともいうべき義歯作成という仕事の性質上、手先の器用さ、集中力、根気などが求められます。


《臨床検査技師》

  職業の概要 
病院等において医師の指導監督のもとに、細菌、血液、病理等に関する検査業務を行うほか、生理学的検査として医療用電子機器を使用して行う脳波検査、心電検査ならびに患者の血液採取などを行います。近年は超音波やCTなど高性能な医療機器の発達に伴い様々な検査業務にも対応する機会
が増えています。これらの検査結果資料が、医師の診療方針を決める重要な判断材料になることはいうまでもありません。また、医療施設以外の研究所、企業で検査業務に従事する場合も多く活躍する場がさらに拡がっています。臨床検査技師はまさに検査業務のエキスパートといえるでしょう。

  仕事の内容と職場
病院などの医療施設で各種検査業務に従事するのが一般的ですが、その他に都道府県、市町村の衛生課や保健所に所属し、公衆浴場、旅館、ホテル、飲食店、食品製造業、食品販売業、美容院、理容所、クリーニング店、市場など公衆衛生に関係する施設・設備の取扱い状況について監視指導するなど、庶民の公衆衛生を守る技術公務員として活躍する人もいます。また、専門知識を活かし研究所、製薬メーカーへ進む道もあります。なお検査の徹底化を図るために、1993年に法律の改正が行われ、新たにMRI(磁気共鳴画像)検査、サーモグラフィ(熱画像)検査等が加えられています。


《診療放射線技師》

  職業の概要
医師の指示により主としてⅩ線の照射(透視または撮影)により疾病の診断に必要な検査を行ったり、ラジオアイトソープ(放射線同位元素)により、臓器の異常を検出します。
仕事の性質上、患者や被検査者はもとより、技師自身にとっても放射性物質による危険を防ぐ意味で、放射線管理には万全の態勢がとられています。なお最近では脳の断層写真撮影などCTスキャンの扱いも加わるなど、仕事の幅が拡がっているのも特徴です。
  仕事の内容と職場 
健康診断の際に受けるレントゲン検査やガンなどの放射線照射治療が診療放射線技師により
行われていることは良く知られています。これら病院での治療業務以外でも原子力発電所や放射線機器メーカー、企業や研究所などの放射線施設の管理業務に携わっている人も大勢います。


《理学療法士・作業療法士》

  職業の概要
理学療法士はPT(フィジカルセラピスト)、作業療法士はOT(オキュペイショナルセラピスト)と呼ばれ、昭和40年6月に法律によって資格制度が定められました。PTやOTは、いわゆる医学的リハビリテーションの担い手であり、社会構造の変化に伴ってますます重要性を増しています。高齢化や、疾病構造の変化、あるいは交通事故による負傷者の増加は深刻さを深めています。これに伴い、医学的リハビリテーションの需要性は急激に増大しています。医療の目的は単に疾病の治癒に止まらず、社会復帰にわたるまでの指導を含んでおり、このリハビリテーションの根幹をなすのがPTやOTなのです。

  仕事の内容と職場
理学療法士は治療を必要とする心身障害者に、医師の処方に従ってマッサージや体操、電気、温熱などを利用する理学療法を行い、障害者の基本的動作・応用動作能力の回復訓練、残存能力の検査、回復状況の確認等について評価を下します。具体的な治療法は、①治療体操 ②マッサージおよび徒手矯正 ③温熱療法・光線療法・電気療法 ④水治療法・温泉療法 ⑤スポーツ・遊戯・ダンス等です。
作業療法士は、神経マヒ、精神障害などの慢性疾患のある患者を対象に、手芸、工作、陶芸、園芸、玩具操作等の作業を通じて、応用的動作、日常動作および社会的適応能力回復のために訓練法の決定を行います。また、レクリエーションや趣味等への関心を持たせるための指導も行います。
<理学療法士・作業療法士の職場>
理学療法士、作業療法士の職場は拡大傾向にあります。従来からの病院、リハビリテーションセンター等の医療施設だけではなく、介護保険制度の導入とともに、今後は社会福祉施設や在宅介護という地域や生活に密着した形で、その仕事は分化し、より専門性の高い技術が要求されることになります。

  理学療法士、作業療法士が活躍している職場を整理してみると次のようになります。

  ①医療施設=一般病院、精神病院、特定機能院診療所等。

  ②行政施設=保健所、保健センター、身体障害者更生相談所、相談所等。

  ③福祉施設=特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、肢体不自由者厚生施設、精神薄弱者援護施設、児童養護施設等。


《臨床工学技士》

  職業の概要
臨床工学技士は、厚生労働大臣の免許を受け、医師の指示のもとに人工心肺装置、人工呼吸器、人工透析装置などの広範囲な医療機器である「生命維持管理装置」の操作及び保守点検を行います。
1987年に臨床工学技士法が成立し、1988年に初めて第1回の臨床工学技士の国家試験が実施され、現在までに1万人以上の臨床工学技士が各医療機関で活躍していますが、現場における臨床工学技士の充実度は未だに十分とはいえません。

  仕事の内容と職場
臨床工学技士の職場は、病院のほか医療機器メーカー等でのME(医用工学)機器の開発業務や医療機器に関するユーザーへの教育や指導業務、あるいは学校や教育機関において医用工学に関する研究にたずさわる等、幅広い広がりを見せています。
 なお養成施設は、専門学校が28校、大学が22校あります。(2010.3.1現在)


《按摩・マッサージ・指圧師・鍼師・灸師》

  職業の概要
あんま・マッサージ・指圧は、基本となる動作が似ているため技術的には別種のものですが、法律上は一つの資格に統一されています。あんまは、衣服やタオルなどの上から揉んだり押したりしながら刺激を加えます。それに対してマッサージの施術は直接皮膚に触れ、さすったり擦ったりする方法を取ります。そして指圧は問題となる部位を押圧して強い刺激を与えます。治療師はこれらの施術を使い分けながら適切な治療にあたります。
また、はり・きゅうは東洋医学療法の一つですが、技術的には別種のもので免許区分もはり師免許ときゅう師免許とに分かれています。どちらも体の経穴(ツボ)に刺激を加えることで病気を回復させる施術です。鍼師は金属の細い針を刺す方法、灸師は艾(もぐさ)を燃焼させる方法を行います。

  仕事の内容と職場
いずれの仕事も、比較的開業しやすいこともありすぐ独立するという場合もありますが、技術を高めるために一旦施術所や病院で勤務するのが一般的です。また、最近では専門知識や技術経験を活かしスポーツ・トレーナーとして運動選手の活動を側面からサポートする仕事に就く人も増えています。さらに、介護保険制度の導入に伴い、介護支援を専門に行うケア・マネージャーとしての道も開け、高齢化社会を支える一員として活躍の場が大きく広がりつつあります。


《柔道整復師》

  職業の概要
柔道整復師は、骨折や脱臼、打撲や捻挫などを治療する仕事で「接骨」あるいは「ほねつぎ」などと呼ばれてきました。技術的には柔道の技倆が必要であり柔道整復学校の専門科目として課せられています。近年は、社会のニーズ拡大に伴い養成施設の新設が相次いでいます。

  仕事の内容と職場
施術所や病院などで活躍する、またスポーツ関連の仕事に従事する、福祉社会の到来による介護支援の一翼を担う、などの点で前項「按摩・マッサージ・指圧師」「はり師・きゅう師」と同様の状況といえるでしょう。
なお養成校は、大学が8校、短大が2校、専門学校が90校あり、2007年度頃の新設が目立ちます。


《視能訓練士》

  職業の概要
視能訓練士の国家試験がわが国で初めて実施されたのは、昭和46年のこと。
長い間、治療が不可能とされていた弱視や斜視が、太平洋戦争後に欧米から先端技術が導入され、視能回復訓練の研究開発が行われるようになったのです。女性中心の職業ですが最近は男性の有資格者が増えています。

  仕事の内容と職場
視能訓練士の仕事は、大きく次の2つにわらます。その1つは、眼科医師が診断を下すための基礎検査。たとえば視力、視野、調節及び屈折、色覚、光覚、眼圧、眼球運動などを検査、チェックします。2つめとしては、主に弱視、斜視等の患者に対し視能矯正訓練を行います。
視能矯正の対象は、近年の高齢化社会に対応して、以前のような幼児中心から老人まで多岐にわたってきています。時代の流れとともに視能訓練士に対する需要はますます拡大し、医療チームの一員として不可欠な位置付けになっています。新卒の就職率はほぼ100%です。


《義肢装具士》

  職業の概要
義肢装具士は昭和62年に法制化された、比較的新しい資格です。一般にはあまり知られていませんが、義肢装具士の役割は重要です。義肢装具とは事故や病気で失った手や足のかわりを補う人口手足の製作や、身体の機能が失われたり弱ったりしたときに回復させるために用いる器具を製作することを指します。
社会の仕組みや産業構造が複雑化するにつれ、労働災害や交通事故が増加する一方で、肉体的ハンデを負ってもなお再び社会に復帰しようと努力する人達もまた、年々増加の一途をたどっています。これらの人たちにとって、義肢装具士はなくてはならない存在なのです。
  仕事の内容と職場
義肢装具士は、厚生労働大臣免許を受け医師の指示に基づいて、義肢や装具の装着部位の型採り及び製作、さらに患者の身体への適合・装着を行う仕事です。主には義肢装具製作所や病院などに勤め、身体の弱い部分を補強するコルセットから精密な義手や義足の製作に至るまでの幅広い範囲にわたりそれぞれの患者さんに最適なものを作り上げ、その出来具合で評価が決まります。これらの内容をみてもわかる通り、この仕事は解剖学や生理学などの専門的な知識と製作技術の両方が相まって成立します。
こうした状況を背景に、より良いものを作るために今後はさらに高度化・複雑化し、これらの製作・適合技術には、今後も高度な内容が求められていくと考えられます。ただ、養成施設が全国に10校と少ないので、近隣に学校があるかどうかをを早めに確認しましょう。


《言語聴覚士》

  職業の概要
1997年12月に「言語聴覚士法」が制定され、認定された新しい国家資格です。ST(Speech Therapist=スピーチ・セラピスト)という名で呼ばれています。それまでは「医療言語聴覚士」という名前で、協会(業界)の定める認定資格でしたが、昨今のこの仕事に対する社会的ニーズの高まりから、厚生労働省管轄としての国家資格に制定されたものです。
  仕事の内容と職場
コミュニケーションをするために必要な言語(発声・発音)、聴覚などの障害を持つ人に対してその機能を回復させるための検査を実施したり、必要に応じた訓練・指導を行います。
例えば、脳卒中のために言語中枢に傷害が起きてうまく発音できなくなったり、失語症の患者にリハビリテーションを施したり、自閉症や言葉の発達に遅れのあるこど

もに対してその家族を含めた指導、援助を行います。活躍する場所としては病院やリハビリテーションセンターなどの医療施設と、学校や福祉施設などがあげられます。近年は養成施設も増え、現在、高卒以上を入学資格とする学校は全国に64校あります。(2009.5.25現在)


《救急救命士》

  職業の概要
救急車の世話にはなりたくありませんが、世の中は何が起きるかわからないものです。最近のデータを見ても、救急車の出動件数は1日平均1万件を越えています。この数字は、車両が急速に増加しはじめた昭和40年代から30年の間に20倍近くに増え、全国で6.5秒に1回の割合で救急車が出動しています(平成16年度)。交通事故の多発や高齢化社会による、
救急医療へのウェイト増加が如実に語られていると言えましょう。
こうした状況のなかで、新しく生まれた救急救命士は、これまでわが国の救急隊員が行ってきた応急措置の範囲を大幅に拡げた国家資格です。

  仕事の内容と職場
救急救命士は、簡単な人工呼吸や、手による心臓マッサージなどの初歩的な内容から大きく踏み出し、救急自動車内で患者の症状が著しく悪化しそうな場合や、生命に危険が及びそうな場合、その患者に対して高度な医療技術である気道の確保や、心拍の回復等の救命措置を医師の指示のもとに行います。現在は消防署の救急隊員(地方公務員)として人命救助の最前線で働く場合が主流になっています。
なお養成施設は、高校卒業者の場合に専門学校は22校(2年制・3年制あり)、大学は7校あります。いずれも受験資格が得られます。