学力試験は、入学後のかなり高度な専門教科を理解できる基礎学力を備えているかどうかを見るためのもので、入試科日のいずれもが、入学後の教科と直接つながっているという特徴があります。もちろん、学校の種別や国・公・私立の設置者の違いにより、必須科目や指定選択科目は異なりますが、国立・公立学校の科目指定を標準的なものとして受け止めることが大切です。なお最近では、大学・短大との併願流れを防ぐため、各校とも推薦入試を重視する傾向にあります。
入学試験は通常、第1次試験と第2次試験にわけて実施されます。第1次試験は学力考査で、英語、国語、数学、理科の4教科。各教科100点満点とし、400点満点のうち合格最低ラインを60%以上とする学校が多く、なかには50%以上というところもあります。最近は入試科目を減らす学校も徐々に増えていますが、1科目の失敗が大きなダメージにつながるので安易にとらえるのは禁物です。受験教科以外の教科も入学後の授業には必要となりますから実力をつけておきましょう。
人物考査の目的
第2次試験は、第1次試験合格者を対象とした人物考査です。専門学校では、たとえ学力試験の結果がトップであっても、医療従事者としての資質に欠けると判断されれば、容赦なく不合格とされるケースも見うけられます。この点が大学入試と基本的に違うところです。
=面接=
人物考査では最も重要。面接態度や言葉の選び方、話し方などは、そのまま“職場での人物像”として投影されます。質問に対して自分の考え方をはっきり述べることができなかったり、人間的に暗い印象をあたえることのないよう、日常生活から気を配りたいものです。
=小論文=
テーマは当日与えられます。テーマに応じて、自分の考え方を述べるわけですが、テーマのとらえ方や考え方の発展のさせ方によって、受験生の人となりを、かなり正確に判断することができます。家庭、友人、高校生活、先生など、自己に影響を及ぼしている身近な問題について真剣に考える機会を持つことを忘れてはなりません。
=身体検査=社会人にとって、健康こそ第一の必要条件です。優れた知識や技術は、健康であるからこそ生かせる事を忘れずに、日頃から健康に留意し体力を養ってください。
入試科目と高校教科の関係
年々厳しさを増す看護・医療学校の入試を突破するためには、まず学科ごとに厚生労働大臣又は文部科学大臣の定める基本カリキュラムと、各学科における入試必須科目、選択科目の特徴を通して、
①各学科が求める基礎学力と高校教科の関係、
②教科選択と重要科目の関係を十分把握したうえで、しっかりとした学習計画をたてる必要があります。
看 護
高校の理数教科は、看護学校のカリキュラムを理解するための必要十分な基礎科目として、いずれも重要です。
また英語は医学専門用語の勉強をするために、国語はさまざまな臨床記録やレポートを作成するうえでこれも重要です。英語や国語のウエイトは看護だけでなく、医療分野のすべてに大きいと言えます。
〈看護カリキュラム〉
基礎科目=国語、音楽、外国語、保健体育、その他:205時間
専門基礎科目=解剖生理、栄養、薬理、病理、微生物、保健医療、関係法規、精神保健:245時間
専門科目=基礎看護、成人看護、老人看護、母子看護:455時間 臨床実習:595時間
※患者の高齢化や医療技術の高度化などに伴って、医療現場における看護業務が大きく変わってきているため、厚生労働省では看護学校の教育カリキュラムを7年前に、22年ぶりに大幅に改定しました。
3年課程では総授業時間数を3、000時間に短縮。講義時間数を減らして、全体的にゆとりをもたせ、基本技術の習得に重きをおいた内容になっています。
新しい科目として[老人看護学]を設けるなどのほか、男女の区別をなくして、同じ内容のカリキュラムにしたことも大きな特徴です。
◆国家試験(新卒者)合格率 96.4% (2010年) 合格者46,785名/受験者48,509名
歯科衛生
看護と比べて修業年限が短く基礎科目が少なかった時代から、3年制へ移行する時代へと変わり、カリキュラムの充実化がはかられました。
教科は、口腔医学に限定されているわけではなく、医学の基礎全般にわたるので、国語、英語、理数科目については、しっかりとした力をつけておくことが大切です。
〈歯科衛生カリキュラム〉
基礎科目=人文科学・社会学、自然科学、外国語:180時間
専門科目=歯科衛生士概論、解剖学、生理学、病理学、微生物学、薬理学、口腔衛生学、衛生学・公衆衛生学、栄養指導、衛生行・社会福祉、歯科臨床概論、歯科保存学、歯科補綴学、口腔外科学、小児歯科学、矯正歯科学、歯科予防処置、歯科診療補助、保健指導、臨床実習:1785時間
変化する歯科医療の現状に対応するには、さらに充実した教育体制が必要だという意見が主流となってきました。厚生労働省では、これを受けて歯科衛生士養成施設は現在3年制としてスタートしています。
◆国家試験合格率 96.5% (2010年) 合格者5,585名/受験者5,788名
歯科技工
2年制であるため専門科目を中心としたカリキュラムが組まれています。また、看護や歯科衛生とは異なり病理的な教科よりも、義歯制作に関する技術的専門教科(実習)がそのほとんどを占めています。高校教科では特に物理、数学が重要で、その他美的なセンスや手先の器用さが求められます。
〈歯科技工カリキュラム〉
外国語、造形美術概論、関係法規、歯科技工学概論、歯科理工学、歯の解剖学、顎口腔機能学、有床義歯技工学、歯冠修復技工学、矯正歯科技工学、小児歯科技工学、歯科技工実習:2000時間 選択必修科目:200時間
◆国家試験合格率 98.4% (2010年) 合格者1,293名/受験者1,314名
臨床検査
血液の病理学的分析検査、脳波や心電図による検査、細胞や細菌の病理学的培養検査などを行い、医師が診断に必要とするデータを作成します。いわば、化学の応用専門家ともいえる職業で、その性格はカリキュラムにも明確に打ち出されています。 高校教科では化学、物理、生物、数学など、自然科学系の科目が特に重要です。大学の理系を受験するのと同じような教科選択が求められるので、受験準備にも十分な時間をかけながら実力を養うよう心掛けることが大切です。
〈臨床検査カリキュラム〉
基礎科目=人文科学、社会科学、自然科学、
外国語、保健体育:390時間 基礎専門科目=医学概論、解剖学、生理学、病理学、生化学、微生物学、医動物学、情報科学概論、検査機器総論、医用工学概論:660時間 臨床専門科目=公衆衛生学、臨床医学総論、臨床病理学総論、臨床検査総論、検査管理総論、病理組織細胞学、臨床生理学、臨床化学、臨床血液学、臨床微生物学、臨床免疫学、放射性同位元素検査技術学、関係法規:1740時間
◆国家試験合格率 67.0% (2010年) 合格者2,652名/受験者3,959名
診療放射線
臨床検査が化学の応用領域であるとすれば、診療放射線は物理の応用領域であるといえます。カリキュラムでもあきらかなように、物理を中心として化学、生物、数学が大きなウエイトを占めており高校の教科類型としては理系であるといえます。やはり理系大学受験のつもりで勉強する必要があります。
〈診療放射線カリキュラム〉
基礎科目=人文科学、社会科学、自然科学、外国語、保健体育:300時間
専門科目=医学概論、臨床医学概論、放射線生物学、解剖学、エックス線解剖学、生理学及び生化学、病理学、衛生学及び公衆衛生学、放射線衛生学:255時間
応用数学、放射線物理学、放射化学、電気工学、電子工学、自動制御工学:540時間
放射線機器工学、画像工学、放射線写真学、エックス線撮影技術学、放射線計測学、放射性同位元素検査技術学、放射線治療技術学、放射線管理学、関係法規:1305時間
◆国家試験(新卒者)合格率 83.0% (2010年) 合格者1,648名/受験者1,985名
臨床工学
臨床工学技士とは、「厚生労働大臣の免許を受け、臨床工学技士の名称を用いて医師の指示のもとに生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」を定めた国家資格です。
臨床工学技士の資格を得るためには「文部科学大臣が指定した学校または厚生労働大臣が指定した臨床工学技士養成校(課程)において、3年以上臨床工学技士として必要な知識及び技能を修得」した後、厚生労働大臣の行う国家試験に合格しなければなりません。入試科目としては、英語、国語、数学、理科などで、とくに物理、化学、数学が重要です。
〈臨床工学カリキュラム〉
基礎科目=人文科学、社会科学、自然科学、外国語、保健体育:420時間
専門基礎科目=公衆衛生学、医学概論、人の構造及び機能、病理学概論、基礎医学実習、臨床生理学、臨床生化学、臨床免疫学、臨床薬理学、看護学概論、応用数学、医用工学概論、システム工学、情報処理工学、システム・情報処理実習、電気工学、電子工学、物性工学、機械工学、材料工学、計測工学、放射線工学概論:1110時間
専門科目=医用機器学概論、生体機能代行装置学、医用治療機器学、生体計測装置学、医用機器安全管理学、臨床医学総論、関係法規、臨床実習:1140時間
その他選択必修科目300時間
◆国家試験合格率 77.4% (2010年) 合格者1,516名/受験者1,959名
理学療法・作業療法
身体障害者や精神障害者を対象に社会復帰の治療・訓練を行うリハビリテーションと呼ばれる分野の専門識をめざします。 PT(フィジカル・セラフィ)を理学療法、OT(オキュペイショナル・セラフィ)を作業療法といい、社会的に重要な役割を果たすべき分野です。
カリキュラムは基礎科目、基礎医学、臨床医学にわたってPT・OTとも共通。専門科目のみが異なります。
高校教科では、やはり理数科目が重要で理系大学受験なみの学力が求められます。
〈共通カリキュラム〉
基礎分野=科学的思考の基盤、人間と生活:14単位(旧カリキュラムでは、人文科学、社会科学、自然科学、保健体育、外国語:360時間)
専門基礎分野=人体の構造と機能及び心身の発達:12単位
疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進:12単位
保健医療福祉とリハビリテーションの理念:2単位(旧カリキュラムでは、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、臨床心理学、リハビリテーション概論、リハビリテーション医学、一般臨床医学、内科学、整形外科学、神経内科学、精神医学、小児科学、人間発達学:810時間)
〈理学療法専門分野〉
基礎理学療法学:6単位 理学療法評価学:5単位 理学療法治療学:20単位 地域理学療法学:4単位 臨床実習:18単位(旧カリキュラムでは、理学療法概論、臨床運動学、理学療法評価法、運動療法、物理療法、日常生活活動、生活環境論、義肢装具学、理学療法技術論、臨床実習:1620時間)
◆国家試験合格率 74.3% (2010年) 合格者7,736名/受験者10,416名
〈作業療法専門分野〉
基礎作業療法学:6単位 作業療法評価学:5単位 作業療法治療学:20単位 地域作業療法学:4単位 臨床実習:18単位(旧カリキュラムでは、作業療法概論、基礎作業学、作業療法評価法、作業治療学、作業療法技術論、臨床実習:1605時間)
◆国家試験合格率 71.0% (2010年) 合格者4,116名/受験者5,794名
あんま・マッサージ・指圧・はり・きゅう
他の医療系分野の学校に比べると、比較的入学が容易です。国語と理科の2科目をベースに、数学、社会を入試科目に加える学校もあります。また、数は少ないですが英語を課す学校もあります。理科は生物の出題が主です。
〈カリキュラム〉
基礎科目=人文科学、社会科学、自然科学、保健体育、外国語
専門基礎科目=医療概論、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学
専門科目=東洋医学概論、経路経穴概論、あん摩マッサージ指圧師理論、はり理論、きゅう理論、東洋医学臨床論、実技
あんま・マッサージ・指圧師養成は、2550時間
はり師、きゅう師養成は、2865時間
あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師養成は、3165時間
◆国家試験合格率(2010年) 按摩・マッサージ・指圧師 87.0%
- 合格者1,609名/受験者1,849名 鍼師 83.0%
- 合格者4,553名/受験者5,483名 灸師 83.6%
- 合格者4,595名/受験者5,499名
柔道整復
あんま・はり・きゅう・マッサージ学校とほぼ同じ入試科目です。柔道実技を行う学校もありますが、数は多くありません。
〈柔道整復カリキュラム〉
基礎科目=人文科学、社会科学、自然科学、保健体育、外国語300時間
専門基礎科目=医学史、解剖学、生理学、運動学、病理学概論、衛生学・公衆衛生学、一般臨床医学、外科学概論、整形外科学、リハビリテーション医学:1005時間
専門科目=柔道整復理論、柔道整復実技、関係法規:975時間 選択必修科目200時間
◆国家試験合格率 69.3% (2010年) 合格者4,592名/受験者6,625名
視能訓練士
見る機能(視能)に障害をもつ人に、機能回復のための視機能検査と視能矯正訓練を行う国家資格です。
斜視や弱視などの視能障害の治療には、長期間にわたる矯正訓練が必要になります。視能訓練士は、医師が診断治療を行うための基礎検査を行い、医師と相談のうえで訓練プログラムを作成し、各種光学機器などを使って矯正訓練を行います。
視能障害は早期発見、早期治療が大切なため、乳幼児に対する検査、診断に重点がおかれてきましたが、近年は、老化や糖尿病などで視力の低下した人に対するリハビリテーション指導も増えてきています。
病院やリハビリテーションセンターなどの医療機関のほか、保健所、学校などが職場となります。
〈視能訓練士カリキュラム〉
基礎科目は840時間、病理学、視覚生理学、生理光学、眼疾病学、眼科薬理学、神経眼科学などの専門科目は1290時間
◆国家試験(新卒者)合格率 96.7% (2010年) 合格者623名/受験者644名
義肢装具士
障害で失った手足の機能の代わりをする義肢、コルセットなどの治療を目的にした装具製作が主な仕事です。手足の機能を補完し、社会復帰を促進するリハビリテーションを行う国家資格です。
多くの義肢装具士は義肢装具の製作会社に所属しており、病院、リハビリテーション施設、肢体不自由児施設などに出向いて利用者の相談にのり、医師の処方のもとに義肢装具製作のための設計、製作、さらに適合などのアフターケアも行います。
リハビリテーション医療の普及や、医学、工学の急速な進歩により、義肢装具の開発・製作も大きく変化し、高い専門性が求められています。素材や設計、デザインなどの知識・技術、整形外科やリハビリテーションなどの基礎知識も必要になります。
〈義肢装具士カリキュラム〉
基礎科目は390時間、公衆衛生学、解剖学、生理学、機能解剖学、運動学、臨床神経学、整形外科学、リハビリテーション医学、義肢装具材料力学など医学・工学の専門基礎科目は885時間、義肢装具基本工作論、義肢装具生体力学、義肢装具採型・採寸学、義肢装具適合学などの専門科目は1485時間
◆国家試験合格率 88.4% (2010年) 合格者176名/受験者199名
言語聴覚士(言語療法士)
言語障害や難聴、失語、言語発達遅滞など言語・聴覚の障害をもつ人に対し、専門的な訓練・指導を行い、機能回復や障害の軽減を図る国家資格です。
音声機能、言語機能又は聴覚に障害のある人の機能の維持向上を図るため、言語訓練、これに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行うことが主な仕事となります。
リハビリテーション科・耳鼻咽喉科を中心とした病院・診療所、難聴幼児通園施設・聴覚言語障害者更生施設を中心とした社会福祉施設、保健所などが職場となります。今後は、難聴学級など教育機関での活躍も期待されています。
〈言語聴覚士カリキュラム〉
基礎分野は12単位、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、言語学、音声学、音響学、言語発達学などの専門基礎分野は29単位、失語・高次脳障害機能障害学、発声発語・嚥下障害学、聴覚障害学、臨床実習などの専門分野は44単位
◆国家試験合格率 69.3% (2010年) 合格者1,645名/受験者2,374名
救急救命士
患者を病院に運ぶ救急車内や救急現場などで、気道の確保や心拍の回復、輸液処置など患者の生命を維持する仕事です。一般の救急隊員には許されていない呼吸停止や心臓停止など心肺停止状態の患者に、蘇生に必要な措置を行うことができます。1992年の救急救命士法施行に伴い導入された国家資格です。
救急救命士の資格を持っている人は消防官や医療従事者、自衛隊員などの職業の人たちに多く、就職先も消防署、病院などの医療機関が中心です。
時間や場所を問わず、一刻を争う緊迫した状況のなかで、冷静な判断と適切な処置が求められるだけに、社会的な意義、必要度の高い仕事といえます。
救急救命士の主な仕事
◇心臓停止状態の患者に電気による刺激を与え、拍動を正常な働きに戻す(AED:自動体外式除細動器)
◇輸液(点滴)
◇器具を用いた気道確保
(救急救命士カリキュラム)
基礎分野は8単位。解剖生理学、生化学、病理学・法医学、公衆衛生学などの専門基礎分野は10単位。救急医学概論、救急症候・病態生理学、疾病救急医学、外傷救急医学、環境傷害学・急性中毒学、臨地実習などの専門分野は51単位
◆国家試験合格率 84.0%(2010年) 合格者2,131名/受験者2,538名